相続税・生前対策

相続の発生

大切な方が亡くなり悲しい日々が続きますが、様々な手続きは待ってはくれません。その中でも相続税の申告は大仕事です。

 

申告・納税の必要性判断

相続税の申告は、計算をして相続税がかかる場合は必ず申告する必要があります。
また、計算をして相続税がかからない場合でも申告が必要な場合があります。

Q.相続税の課税対象とは?

A.
相続税の申告と納税は、被相続人から相続や遺贈によって取得した財産(被相続人の死亡前3年以内に被相続人から贈与により取得した財産を含みます。)及び相続時精算課税の適用を受けて贈与により取得した財産の額の合計額が基礎控除額を超える場合に必要です。
基礎控除額の範囲内であれば申告も納税も必要ありません。相続税の申告は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内に行うことになっています。
ただし、配偶者に対する相続税額の軽減や小規模宅地等の減額の特例など、適用を受けるために相続税の申告をしなければならない規定があります。これらの規定の適用を受けたい場合には、たとえ相続税額がゼロとなっても、相続税の申告書を提出する必要があります。

Q.財産の確認方法は?

A.
被相続人が死亡日現在で所有していたすべての財産を調べます。
  • 不動産
    固定資産税の納付書や、市町村の税務課に土地建物の評価証明を取り寄せて調べます。
    自宅以外にも不動産がある時はその所在地の税務課から評価証明を取り寄せて調べる必要があります。
    借地権の有無、土地・建物の使用状況・土地の現況により評価がかわりますので、財産として一番把握はしやすいのですが財産評価をするには専門的な知識が必要です。
  • 手持ち現金
    通常ですとそんなに現金をご自宅においているご家庭はないでしょうが、亡くなる直前に葬儀費用に使おうと思って通帳より引出した現金も手持ち現金に含まれます。
  • 預金
    預金通帳と定期預金証書により確認します。最近ではインターネット専業銀行もあることから、銀行のカードより被相続人の取引銀行を確認することが必要になります。申告時には死亡日現在の残高証明書の取り寄せが必要になります。
  • 有価証券、株式、投資信託、債券、農協出資金等
    取引証券会社より死亡日現在の預り株式などの明細および相続株価評価額を取り寄せる必要があります。株主総会の案内状や配当金の支払明細などで正確な持ち株を確認する必要があります。
    また、農家の方は農協への出資金がほとんどの場合あるので出資金残高証明書を取り寄せる必要があります。
  • 事業用、農業用財産、商品、売掛金、自動車等
    青色申告決算書などで確認します。自動車については、車検証のコピーおよび取得年月とおおよその取得金額を調べる必要があります。
  • 家庭用財産
    特に高額な財産・書画骨とうなどがあるかを調べます。
  • 生命保険・保険契約の権利
    受取金額の明細書が必要になります。また、現在契約中の生命保険・損害保険で積立型のものは積立部分が相続財産となります。保険会社さんに死亡日に解約した場合に戻る解約返戻金相当額の証明書の発行依頼が必要になります。
  • 退職金
    退職所得の源泉徴収票により確認いたします。
  • 立木、庭園設備
ただし、相続税がかからない財産もあります。主なものは次の7つです。
  • 墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物
    ただし、骨とう的価値があるなど投資の対象となるものや商品として所有しているものは相続税がかかります。
  • 宗教、慈善、学術、その他公益を目的とする事業を行う一定の個人などが相続や遺贈によってもらった財産で公益を目的とする事業に使われることが確実なもの。
  • 地方公共団体の条例によって、精神や身体に障害のある人又はその人を扶養する人が取得する心身障害者共済制度に基づいて支給される給付金を受ける権利。
  • 相続や遺贈によってもらったとみなされる生命保険金のうち 500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分。
  • 相続や遺贈によってもらったとみなされる退職手当金等のうち 500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分
  • 個人で経営している幼稚園の事業に使われていた財産で一定の要件を満たすもの。
    なお、相続人のいずれかが引き続きその幼稚園を経営することが条件となります。
  • 相続や遺贈によってもらった財産で相続税の申告期限までに国又は地方公共団体や公益を目的とする事業を行う特定の法人に寄附したもの、あるいは、相続や遺贈によってもらった金銭で、相続税の申告期限までに特定の公益信託の信託財産とするために支出したもの。

Q.債務の確認方法は?

A.
被相続人が死亡日現在で所有していたすべての債務を調べます。
  • 借入金、支払手形、買掛金、貸家などの敷金預り金
    借入金については返済予定表、支払手形や買掛金については事業の帳簿から調べ、貸家などの敷金預り金については賃貸借契約書から調べることができます。
  • 固定資産税等未払税金、未払金、未払医療費
    納付書や領収書、請求書より調べます。
  • 葬式費用(香典返し、墓地購入費用は除きます)
    葬儀社の領収書・請求書、お寺などのお布施や近所の方へのお清めは領収書がなくても葬式費用に含まれますので、忘れないように紙に記録を残しておくようにしましょう。

相続人の把握

亡くなった方に、家族の知らない子供がいた。映画やドラマでよくあるシーンですが、現実ではないと思っていませんか?本当に稀にですがあるケースも・・・。

Q.どのように相続人を把握すればいい?

A.
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍・除籍・改製原戸籍の謄本を取り寄せる必要があります。
戸籍等に知らないお子さんの名前が子として記載されている場合や、遺言書で被相続人が認知をしている場合が稀なケースとしてあります。

Q.相続人になる順番は決まっていますか?

A.
決まっています。民法では順番ではなく順位と言います。
相続人の範囲は、民法で次のとおり定められています。
死亡した人の配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の人は、次の順序で配偶者と一緒に相続人になります。
  • 第1順位
    死亡した人の子供
    その子供が既に死亡しているときは、その子供の直系卑属(子供や孫など)が相続人になります。子供と孫の両方がいるときは、近い世代である子供の方を優先します。
  • 第2順位
    死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)
    父母も祖父母もいるときは、近い世代である父母の方を優先します。
    第2順位の人は、第1順位の人がいないとき相続人になります。
  • 第3順位
    死亡した人の兄弟姉妹
    その兄弟姉妹が既に死亡しているときは、その人の子供。(甥・姪)
    第3順位の人は、第1順位の人も第2順位の人もいないとき相続人になります。
なお、相続を放棄した人は初めから相続人でなかったものとされます。
また、内縁関係の人は、相続人に含まれません。

相続順位

相続税の計算をする場合の法定相続人の数については、次のように取り扱われます。

なお、子供、直系尊属、兄弟姉妹がそれぞれ2人以上いるときは、原則として均等に分けます。
また、民法に定める法定相続分は、相続人の間で遺産分割の合意ができなかったときの遺産の取り分(最低保証分)であり、必ずこの相続分で遺産の分割をしなければならないわけではありません。

Q.遺留分とは何ですか?

A.
被相続人は遺言で相続財産を自由に処分できます。しかし、全部を他人に残すことを認めると残された家族が生活できなくなってしまいます。そのため、相続人の権利をある程度保護するためにあるのが遺留分です。
具体的には、法定相続分に2分の1をかけた割合が遺留分になります。
ただし、遺留分が認められているのは配偶者・子・直系尊属だけで、兄弟姉妹には遺留分はありません。

遺言書の確認

遺言書を発見した場合すぐに確認したくなるものです。
開封する前にすることがありますよ!

Q.遺言書の確認時に注意することはありますか?

A.
見てはいけないものを見たくなるのが人の心理かと思います。
封をしてある遺言書もその1つではないでしょうか?
でもちょっと待ってください。
あなたのお手元にある遺言書はどのような遺言書でしょうか?
  • 公正証書による遺言書→そのままで大丈夫
  • 自筆証書・秘密証書の遺言書→家庭裁判所での検認が必要になります

Q.遺言書を勝手に処分してもいいですか?

A.
封がされていなかったので見てみたら自分に不利な遺言書だったため、処分した。
これはやめてください。相続する権利を失ってしまいます。
民法891条5号により「相続に関する被相続人の遺言書」を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者を相続人の欠格事由としているためです。